(「Tokuzeのメダカ飼育日記」より転載。加筆修正)
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△△県○×町×○用水路
そのメダカは自分が最後の野生メダカであることに気が付いていなかった。
産まれたときから彼の周りにはたくさんの仲間が居たからだ。
今日もいつものようにゆったりと泳ぐ。人間がカダヤシと呼ぶ仲間たちとともに・・・。
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西暦○○○○年○○月○○日付け、△△新聞
【社説】野生メダカ絶滅の報が教えてくれたもの
「日本の河川や沼などに生息していた野生のメダカは絶滅したものと推測される。」
昨日、この悲しむべきコメントを環境省の委託を受けてメダカの生息調査を行ってきた日本メダカ環境保全研究所が発表した。
最後の野生メダカが確認されたのは10年前に遡る。○○県の小学生が川で魚採りをしていて、偶然メダカを5匹採取した。その小学生は自分の採った魚がウグイか何かの稚魚と考え友達に見せようと家に持ち帰ったところ、父親がメダカではないかと気がつき市役所の環境課に届け出て、この魚が野生メダカであることが判明したものである。その貴重なメダカの写真が次のものである。
このような野生メダカ発見の届け出は年に数回はあったが、メダカに代わって生息域を広げてきたカダヤシを見間違えたものがほとんどであり、今回の発見が真正であることが発表されたその後の騒ぎはご承知のとおりである。愛すべきメダカが6年ぶりに発見されたとの情報は一挙に日本を掛け巡り、日本国中が大きな喜びに包まれた。しかし、それも一瞬のことであった。残念ながらその後はいくら探してもメダカは発見されなかったのである。
もちろん、野生メダカの絶滅の恐れが危惧されるようになった30年以上前から、いわゆるメダカマニアたちの手によって人工飼育が行われており、現在でも盛んに人工飼育下でメダカの増殖が図られ、その結果、多くのメダカが家庭で飼育されている。
従って、今回の発表は厳密に言えば野生個体が絶滅しただけのことである。このことを通常の「絶滅」と区別して「野生絶滅」というそうだ。例えば身近な動物でいえば「馬」も野生絶滅した生物である。
しかし、私は本紙の読者に問う。今、皆さんの家庭で飼育されているメダカは本当に野生で絶滅したものと同じメダカなのか。
人工飼育下でメダカの変異種を固定し交配し続けた結果、いまではおよそ原種とはかけ離れたメダカたちばかりが飼育されている。背鰭や尾鰭などがヒラヒラと大きくなり眼球が突出した「出目ダカ」、背鰭がなくなり体に厚みがあり体色が赤い「らんちゅうメダカ」など、いわばリトル金魚のような形態に変化し固定されたものが人気である。
もちろん遺伝的多様性という観点からは、これらのメダカを肯定的にとらえる学者も多いのであろう。
しかし例え同じ種であっても人間が自分好みの形に変異させたこれらの個体をはたして絶滅した野生メダカと同一視してよいものなのか私は大いに疑問を感じる。
私も長年、自宅でメダカを飼育してきたが、野生メダカ絶滅の報に接しメダカ飼育者としてまたマニアとして自戒の念を抱いている。
あの野生のメダカの群れ泳ぐ光景は遂に幻となった。この野生メダカ絶滅の報を我々は決して無駄にしてはならないのである。
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新聞の社説風に書いてみましたが、かなり危うい文章になってしまいました。(汗) このようなことが現実にならないように願う今日、この頃です。 by Tokuze