Tokuzeのコラム

デジタル、写真、オピニオンなど・・・。

オピニオン

メダカを食うブラックバスは宙をも飛ぶのか

(「Tokuzeのメダカ飼育日記」より転載)

山頂の池

「ブラックバスがメダカを食う」(秋月岩魚 著)という名著があります。

外来魚のブッラクバスが各地に密かに放流された経緯や問題点を検証し、生態系に与える影響についてメダカをテーマに訴えた本で、その内容は大きな反響をよびました。

私も以前この本を購入して読んだのですが、ブッラクバスというよりも、この外来魚を利用している人間の商業主義の結果が生態系に影響を与えているということについて考えさせられた記憶があります。

そんな外来魚の問題ですが、過日、ある池(沼)に足を運んで改めてこの問題に触れました。

その池は山の中に佇む自然あふれる知る人ぞ知るという池です。

湖面を多年草の水生植物であるジュンサイ(高級食材になります。)が覆っています。

以前はギンブナや野鯉、モロコなどが生息し、池をそっとのぞいてみると小魚たちが群れていました。

今回訪問してみても、その佇まいは以前とほとんど変わらなかったのですが、この本来静かな池に数人がバス釣りに訪れていたのです。

そして今は小魚たちの姿を確認することは出来ませんでした。

その代わりに池のあちらこちらで大きな錦鯉と、何匹ものブラックバスらしき姿(魚影)を確認しました。

ブラックバスが自然にこの池に入ることは出来ません。ブラックバスは宙を飛んできたのでしょうか。それもあり得ない話です。

どこかの誰かが意思を持ってブラックバスをこの池に放流したのです。ここにも人間の身勝手な姿がありました。

釣りをしている人に聞いてみると、「この池はおもしろいよ。大物が釣れるよ。」ととても喜んでいました。

釣り人には罪がありませんが、以前の池の姿を知っているものとしては、この言葉をとても悲しく聞きました。

ただ救いは、以前と変わらぬジュンサイの姿と多くのトンボたちの姿を確認できたことです。昔からこの池はトンボの生息地としても有名です。

短い時間でしたがオニヤンマやシオカラトンボ、アキアカネ、カワラトンボの仲間などの姿を見ることができました。

シオカラトンボ
ただ、ヤゴたちもブラックバスの餌食になっている筈です。

この池に日本が抱える環境問題の縮図がありました。環境問題の一番の問題(課題)は人間にあります。

難しいことですが、この池を以前の姿に回復出来るのもやはり人間なのでしょう。

身勝手な人間の一員である私に何が出来るのか、いろいろなことを考えさせられた一日となりました。

(とりあえず私に出来ることは、このような池が増えないように皆さんにお伝えすることなのでしょう。)

最後のメダカ

(「Tokuzeのメダカ飼育日記」より転載。加筆修正)

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△△県○×町×○用水路
そのメダカは自分が最後の野生メダカであることに気が付いていなかった。
産まれたときから彼の周りにはたくさんの仲間が居たからだ。
今日もいつものようにゆったりと泳ぐ。人間がカダヤシと呼ぶ仲間たちとともに・・・。

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西暦○○○○年○○月○○日付け、△△新聞 

【社説】野生メダカ絶滅の報が教えてくれたもの
 


「日本の河川や沼などに生息していた野生のメダカは絶滅したものと推測される。」
昨日、この悲しむべきコメントを環境省の委託を受けてメダカの生息調査を行ってきた日本メダカ環境保全研究所が発表した。
最後の野生メダカが確認されたのは10年前に遡る。○○県の小学生が川で魚採りをしていて、偶然メダカを5匹採取した。その小学生は自分の採った魚がウグイか何かの稚魚と考え友達に見せようと家に持ち帰ったところ、父親がメダカではないかと気がつき市役所の環境課に届け出て、この魚が野生メダカであることが判明したものである。その貴重なメダカの写真が次のものである。

最後のメダカ

このような野生メダカ発見の届け出は年に数回はあったが、メダカに代わって生息域を広げてきたカダヤシを見間違えたものがほとんどであり、今回の発見が真正であることが発表されたその後の騒ぎはご承知のとおりである。愛すべきメダカが6年ぶりに発見されたとの情報は一挙に日本を掛け巡り、日本国中が大きな喜びに包まれた。しかし、それも一瞬のことであった。残念ながらその後はいくら探してもメダカは発見されなかったのである。
もちろん、野生メダカの絶滅の恐れが危惧されるようになった30年以上前から、いわゆるメダカマニアたちの手によって人工飼育が行われており、現在でも盛んに人工飼育下でメダカの増殖が図られ、その結果、多くのメダカが家庭で飼育されている。
従って、今回の発表は厳密に言えば野生個体が絶滅しただけのことである。このことを通常の「絶滅」と区別して「野生絶滅」というそうだ。例えば身近な動物でいえば「馬」も野生絶滅した生物である。
しかし、私は本紙の読者に問う。今、皆さんの家庭で飼育されているメダカは本当に野生で絶滅したものと同じメダカなのか。
人工飼育下でメダカの変異種を固定し交配し続けた結果、いまではおよそ原種とはかけ離れたメダカたちばかりが飼育されている。背鰭や尾鰭などがヒラヒラと大きくなり眼球が突出した「出目ダカ」、背鰭がなくなり体に厚みがあり体色が赤い「らんちゅうメダカ」など、いわばリトル金魚のような形態に変化し固定されたものが人気である。
もちろん遺伝的多様性という観点からは、これらのメダカを肯定的にとらえる学者も多いのであろう。
しかし例え同じ種であっても人間が自分好みの形に変異させたこれらの個体をはたして絶滅した野生メダカと同一視してよいものなのか私は大いに疑問を感じる。
私も長年、自宅でメダカを飼育してきたが、野生メダカ絶滅の報に接しメダカ飼育者としてまたマニアとして自戒の念を抱いている。
あの野生のメダカの群れ泳ぐ光景は遂に幻となった。この野生メダカ絶滅の報を我々は決して無駄にしてはならないのである。

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新聞の社説風に書いてみましたが、かなり危うい文章になってしまいました。(汗) このようなことが現実にならないように願う今日、この頃です。 by  Tokuze

 

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